デキサメタゾン(dex)投与で活性化するプロモーターにE1Aの12ScDNAをつないでヒト上皮様癌細胞株KBに導入し、dex投与でE1Aを発現しアポトーシス起こす細胞株MA1を樹立した。またMA1細胞にE1B19kまたはBcl-2を構成的に発現するプラスミドを導入してそれぞれの発現レベルが高い細胞と低い細胞株を樹立した。dex投与後いずれの細胞も12時間でE1Aの発現が最高レベルに達し、p53レベルは24時間で約10倍となった。MA1細胞では48時間後にアポトーシスの開始を始め、72時間後には90%以上が死滅したが、E1B19kまたはBcl-2の発現レベルが高い細胞株ではこの細胞死が強く抑制され、低い細胞株では細胞死の抑制が弱かった。これらの細胞を用い、アポトーシスにおける細胞核の異常凝縮に注目してDNAトポイソメラーゼ(Topo)I、IIα、IIβの量の変動を解析した。その結果、核マトリックス構成成分でG2/M期における娘染色体形成に必須のTopoIIαのみが生存率低下やDNA断片化に先行して減少することが分った。この減少はアポトーシスの抑制と同様にE1B19kやBcl-2の発現レベルに応じて抑制された。TopoIIαの減少機構をMA1細胞の抽出液(S10)とMA1細胞より抽出したTopoIIαを用いて解析した。TopoIIαはS10中でATPとユビキチン依存的に分解された。この分解活性はプロテアソーム阻害剤で抑制されたがICEの阻害剤では抑制されず、アポトーシスの誘導で上昇したがこの上昇はTopoIIα特異的ユビキチン化酵素の活性化によることが分った。以上より本研究で、TopoIIαがE1A誘導アポトーシス進行の決定に関わる標的因子として特異的ユビキチン化酵素の活性化により分解されることを示した。この他、E1B19kと結合する未知の因子B5のcDNAをアポトーシス誘導MA1細胞のcDNAライブラリーより単離した。現在その機能を解析中である。
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