ミクロゾーム型アルデヒド脱水素酵素(msALDH)は、C-末端側の疎水性領域で小胞体膜に挿入され、N-末端を含む分子のほとんどを細胞質側に露出する典型的なC-末端アンカー膜蛋白質である。我々は、msALDHの小胞体膜移行配列が疎水性領域を含むC-末端35アミノ酸残基内に存在することを既に明らかにしてきた。今年度は、小胞体膜移行配列を更に詳しく解析した。更に、COS細胞に発現したmsALDHは滑面小胞体が規則正しく並ぶ結晶体様小胞体を形成するが、これについても解析した。 1.msALDHの小胞体膜移行配列の解析 クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)とmsALDH C-末端35アミノ酸残基の種々のキメラを作製し、COS細胞に発現させその局在を間接蛍光抗体法及び免疫電顕法で調べた。その結果、msALDHの小胞体膜移行配列は疎水性領域(17アミノ酸残基)のN-末端側10アミノ酸残基内のリジン・グルタミン・フェニールアラニン(KQF)配列とC-末端側4アミノ酸残基リジン・アスパラギン酸・グルタミン・ロイシン配列に存在することが判明した。これは、オルガネラ移行配列が膜アンカー領域の両側に存在することがわかった最初の例である。今後、どのアミノ酸がmsALDHの小胞体膜移行に必要か検討を加えたい。 2.msALDHの結晶体様小胞体の形成機構 msALDHのステム領域及びテイル領域を部分的に欠失した変異体をCOS細胞に発現させ、間接蛍光抗体法及び免疫電顕法で小胞体の形状を調べた。その結果、KQF配列のN-末端側に隣接するフェニールアラニン・フェニールアラニン・ロイシン・ロイシン配列を欠いた変異体のみが網状構造を持つ典型的な小胞体を形成し、その他の変異体は結晶体様小胞体を形成することがわかった。
|