研究概要 |
極細胞形成因子であるmtlrRNAがミトコンドリアから搬出されてから極細胞質から消失するまでの変化過程を電子顕微鏡レベルのin situ hybridization法を用いてほぼ明らかにすることができた。この結果を現在まとめている。しかし、ここで用いたpost-embedding法によるin situ hybridization法はミトコンドリア外部のmtlrRNAの検出には適していたが、モトコンドリア内部のmtlrRNAの検出ができなかった。そこでpre-embedding法によるin situ hybridization法を検討中であるがまだ充分な結果は得ていない。 Ding et al(1994)はmtlrRNAは極細胞形成に不可欠な因子とは言えないと報告した。しかし、我々のグループでは同様の実験からまったく異なる結果を得ていた(Kobayashi et al,1994)。両者の結果はosk-bcd3'UTRのショウジョウバエ胚を用いた実験から得られている。bicoid遺伝子はショウジョウバネ胚の前極で発現するがbicoid3'UTRを生殖細胞決定因子であるoskar遺伝子に結合させた融合遺伝子を、ショウジョウバエに導入すると、本来は後極にしか形成されない極細胞が前極にも形成される(Ephrussi and Lehman,1992)。このようなosk-bcd3'UTRのショウジョウバエの卵の後極ではmtlrRNAのシグナルが見られるのに前極ではmtlrRNAのシグナルが見られないのでmtlrRNAは極細胞形成に不可欠とは言えないとDing et al(1994)は報告した。我々のグループでさらに詳しい追試および電子顕微鏡レベルでのin situhybridizationを行い検討した結果、osk-bcd3'UTRのショウジョウバエの前極でも後極と同様にmtlrRNAはミトコンドリアから外に搬出されていることが明らかとなった(Kobayashi et al,1995)。
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