研究概要 |
極細胞形成因子であるmtlrRNAがミトコンドリアから搬出されてから極細胞質から消失するまでの変化過程とを電子顕微鏡レベルのin situ hybridization法を用いてほぼ明らかにすることができた。この結果をD.G.D.38,489-498(1996)に報告した。 しかし、ここで用いたpost-embedding法によるin situ hybridization法はミトコンドリア外部のmtlrRNAの検出には適していたが、ミトコンドリア内部のmtlrRNAの検出ができなかった。そこでpre-embedding法によるin situ hybridization法を試みた。その結果、Lowicryl HM20に包埋し低温紫外線重合させたブロックを薄切した切片を用いることにより、ミトコンドリア内部のmtlrRNAシグナルが検出可能になった。 次に、mtlrRNAの搬出機構解明の糸口を得るためにTudorタンパク質の局在を観察した。Tudorタンパク質の機能を欠く突然変異胚ではmtlrRNAがミトコンドリア外へ搬出されないことが示唆されている。さらにTudorタンパク質は極顆粒のみならずミトコンドリアにも局在していることが報告されている。以上のことからミトコンドリアに局在するTudorタンパク質がmtlrRNAと結合しmtlrRNAをミトコンドリア外の極顆粒へと移送するのではないかと考えた。実際、Tudorタンパク質は、mtlrRNAがミトコンドリアから移送される時期にmtlrRNAと同様に極顆粒の周縁部にかたよって分布することが明らかとなった。結果は動物学会大会(札幌、1996)で報告した。 一方、ショウジョウバエ生殖細胞形成に関わる新しい因子polar plasm component(pgc)名付けた遺伝子が単離された。この遺伝子は遺伝子配列から判断すると、タンパク質には翻訳されずにRNAとして機能すると予測された。そこで、電子顕微鏡レベルのin situ hybridizationを用いて、pgc RNAが極顆粒に局在することを実証した(Nakamura et al,1996)。
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