研究概要 |
1.腺胃上皮細胞の分化は間充織によって決定される。ラット胎児の腺胃上皮を単独で培養すると、上皮はカテプシンEを発現し表層粘液細胞に分化するが、上皮を間充織と共に培養すると、上皮は頸部粘液細胞に分化しペプシノゲンを発現するようになる。よって、腺胃上皮の分化は間充織によって決定されると考えられる。 2.肝細胞増殖因子(HGF)は消化管の上皮・間充織相互作用に関与する因子の一つである。ラット胎児の消化管上皮細胞の初代培養系において、HGFが上皮細胞の増殖を部域特異的に促進することが明らかになった。一方、消化管間充織がHGFmRNAを発現すること、消化管の上皮及び間充織がHGF受容体mRNAを発現することが示された。よって、HGFが消化管での上皮・間充織相互作用に関与していると結論した。 3.角化細胞成長因子(KGF)も消化管の上皮・間充織相互作用に関与する因子の一つである。上記の培養系において、KGFは前胃上皮と小腸上皮の増殖を有意に促進したが、腺胃上皮の増殖には影響しなかった。また前胃・腺胃・小腸のいずれの器官においてもKGFは間充織でのみ、KGF受容体は上皮でのみ発現されていた。よってKGFも消化管での上皮・間充織相互作用に関与していると結論した。 4,腺胃におけるHGFとKGFの機能分担。腺胃における上皮・間充織相互作用にHGFとKGFという2つの因子が関与していることが明らかになったが、この2つの因子の機能の差異を明らかにするために、腺胃の発生に伴うHGF、KGF及びその受容体の発現量の変化を、定量的RT-PCRの系を用いて調べた。その結果、HGFは形態形成時に強く発現され、KGFは形態形成終了後に強く発現されていた。よってHGFとKGFは何らかの機能分担をしていると考えられる。
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