1.胚幹(ES)様細胞株OLES2の性質と培養液の検討:OLES2はアルカリフォスファターゼ陽性でフィーダー細胞を用いずに培養できる。核型解析で、85%の細胞が正常な二倍体(2n=48)であることがわかった。次に培養液に添加しているLIFおよびbFGF(牛)の濃度と細胞の増殖の関係を調べた。LIFは0〜10^4U/mlの範囲で、細胞の増殖に明らかな影響を与えなかった。bFGFは、0〜20ng/mlの範囲で濃度依存的に細胞の増殖を促進したが、これ以上の濃度では差が見られなかった。20ng/mlの濃度での集団倍加時間は24時間であった。濃度0の場合には細胞の増殖は大幅に遅れ、大型で扁平な形態に変化した。このことからbFGFはメダカES細胞が活発な増殖を維持し、未分化状態を保つために必要であることがわかった。 2.ES様細胞を用いたキメラの作製法の改良:胚に注入されたES様細胞が胚の組織に取り込まれることは昨年度の研究からわかっているが、細胞を移植した個体での黒色素胞の分化や生殖系列キメラの作製にはいたっていない。蛍光標識した細胞の胚の中での動向を追跡した所、室温での注入実験の場合、多くの胚の中で、注入された細胞は互いに接着して一つの大きな細胞塊を形成しており、広く分散していないことがわかった。これを改善するために、注入実験を氷温で行ったところ、70%の胚で注入細胞が胚の中に広く分散することがわかった。また、分散の程度も氷温のほうがはるかに高かった。この成果を用いることによって、キメラ作製の効率が上がることが期待できる。
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