平成6年度においては、主にギャップ結合による細胞間結合がイモリの水晶体再生の過程でどのように変化するかを検討した。これはニワトリ胚網膜色素上皮細胞の培養系で、分化転換の始動にともなってギャップ結合が失われるという、申請者らが既に得ている結果に基づいた研究である。予備的な形態観察によれば、イモリ虹彩においても水晶体再生に先立ってギャップ結合の一時的消失がみられる。この消失は水晶体を生ずる背側の虹彩において顕著であり、腹側では見られない。この興味深い現象をより定量的に確認するため、ギャップ結合構成タンパク質コネキシン遺伝子をイモリにおいて単離する試みをおこなった。他の脊椎動物において眼で発現するコネキシン43分子に注目してPCR法を行ったところ、高い相同性を持つDNA断片を得ることができた。この分子が虹彩で発現していることは、RT-PCR法によって確認でき、現在分子全体のアミノ酸配列の決定を試みている。これにより、ペプチド抗体を作成することが可能になり、ギャップ結合の分布変化の詳細な観察が可能になると期待される。現在までの形態的な観察によれば、水晶体摘出後約10日以降では、上述のような背側でのギャップ結合の減少が見られるが、それ以前では、むしろ虹彩全体でコネキシンmRNAの増加およびギャップ結合構造の増加があることがわかった。 一方、従来のニワトリ胚網膜色素上皮細胞との橋渡しとなる系として、ニワトリ虹彩色素上皮細胞培養の系を新たに開発し網膜色素上皮と同様の分化転換効率を得るにいたった。
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