[神経追跡物質による末梢ニューロンの標識]3%WGA-HRP溶液を10匹の雄性ラットの右側上頚神経節に注入し、交感神経節後ニューロンを順行性に標識した。頭頚部の各種神経節のうち、(1)交感神経節として対側の上頸神経節、星状神経節、(2)知覚神経節として両側のC2-C8の脊髄神経節と両側の三叉神経節、(3)自律神経節として両側の翼口蓋神経節と耳神経節を摘出した。65μの連続クリオスタット切片を作製、HRPの発色にはTMB反応を行って、逆行性に標識されてくるニューロンを観察した。 [所見](1)対側の上頚神経節と星状神経節では多数の逆行性標識細胞が観察できた。時には逆行性標識された軸索や樹状突起の中にまでWGA-HRPが蓄積している強い逆行性標識の像を観察できた。(2)同側の脊髄神経節では、C_5、C_6、C_7、C_8の神経節において、少量の逆行性標識ニューロンを認めた。しかし、対側の脊髄神経節においてほとんど発見できなかった。(3)同側の三叉神経節では少数の標識ニューロンが見つかったが、対側ではまったく見つからなかった。(4)同側の耳神経節と翼口蓋神経節では少量ながら弱い逆行性標識ニューロンが見つかったが、対側では認められなかった。以上から、交感神経節後ニューロンの軸索中を順行性に終末に向かって送られたWGA-HRPが終末より放出され、それを取り込んで逆行性に細胞体が標識されたニューロンは、もっとも明瞭であったのは同じ交感神経節の体側の上頚、星状神経節においてであり、ついで、明瞭であったのが、同側の三叉神経節と脊髄神経節、および同側の副交感性の耳神経節と翼口蓋神経節であった。 [結論]対側における逆行性標識は交感神経ニューロンに強く認められた。したがって、交感神経神経は正中線をわたって左右のものが密度高く絡まり合うことが分かった。それに対して、知覚線維や副交感神経は、同側性にのみ交感神経線維と少量のみ絡まり合うが、対側のものは交感神経と絡まりあうことがほとんど無いことが分かった。同じ末梢性の神経ではあるが、交感神経には正中線を越えて対側に深く進入する性質があることが判明した。
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