研究概要 |
我々は、各種受容体やそれら受容体の下流に存在する細胞内情報伝達関連分子に関して、松果体内での局在を検討した。神経伝達物質受容体の中ではグルタミン酸受容体の一種であるカイニン酸受容体が松果体に豊富に存在することが明らかとなった。カイニン酸受容体の明暗による発現変化は観察されなかった。神経成長因子受容体の中ではbasic fibroblast growth factor(bFGF)の受容体の一種であるFGFR1/flgの局在がmRNAレベルでも蛋白レベルでも確認された。一般に成長因子受容体の細胞内情報伝達系路のなかで多くの成長因子受容体の下流に位置する重要な情報伝達分子として、MAPキナーゼがある。MAPキナーゼには幾つかのサブタイプがあり、そのなかにExtracellular signal regulated kinase(ERK)がある。ERKにはERK1(p44),ERK2(p42),ERK3などのサブタイプが知られている。我々はこれらERKファミリーの分子の松果体での局在を検討した。その結果、松果体にはERK1が極めて豊富に発現していることが明らかとなり松果体においても成長因子からMAPキナーゼに至る情報伝達経路が存在することが示唆された。MAPキナーゼは成長因子受容体の下流に存在するのみならずサイトカイン受容体の下流にも存在するため、松果体におけるMAPキナーゼの機能を理解するためにはサイトカイン受容体の松果体に存在するかどうかを明らかにすることが次の課題であると考えられる。
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