口腔顔面運動核のpremotor neuron pool(三叉神経運動核周囲の網様体や延髄小細胞性網様体)と大脳基底核の主要な出力部位である黒質網様部との線維連絡を光顕的に追求した結果、以下のことを明らかにした。 1.口腔顔面運動に関与するニューロンが存在するといわれている黒質網様部の背外側部のニューロンが直接、premotor neuron poolへ投射する経路(黒質-premotor neuron pool投射系:両側性で同側優位)に加えて、黒質網様部の背外側部から上丘外側部を介してpremotor neuron poolへ投射する経路(黒質-上丘-premotor neuron pool 投射系)が存在する。この場合、黒質-上丘投射は両側性で同側優位であり、上丘-premotor neuron pool投射は両側性で反対側優位である。(順行性および逆行性標識法と二重標識法による実験) 2.上丘外側部やpremotor neuron poolへ投射する黒質網様部ニューロンの中には、軸索側副枝でもって両方へ同時に投射しているものがある。この場合、両方へ投射するニューロンが存在する黒質網様部の尾側半においてはpremotor neuron poolに投射するニューロンの約30%が上丘にも投射線維を送り、上丘に投射するニューロンの約10%がpremotor neuron poolにも投射線維を送る。(蛍光二重標識法による実験) 以上のように、これまで主として薬理生理学的に示唆されていた大脳基底核の口腔顔面運動への関与を神経線維連絡の立場から証明することができた。
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