研究概要 |
脳の形態形成におけるエストロゲンおよびエストロゲン受容体の機能を検索するた、胎生17,19日および生後0日の雌雄ラットを灌流固定し、30ミクロン厚の凍結切片を作成し、エストロゲン受容体に対する抗体を用いて免疫組織化学法を施行した。視床下部内側視束前野においては、雌ラットにおいて、胎生17日目よりエストロゲン受容体陽性ニューロンが観察されたが、雄ラットにおいては、胎生19日目以降に陽性ニューロンが観察された。また胎生19日目では雌ラットにおいて、雄に比べて強陽性にエストロゲン受容体陽性ニューロンが観察され、生後0日目では雌雄に差は認められなかった。以上より、胎生期において、既にエストロゲン受容体の発現に性差が存在し、性的二型核形成の基盤をなしているものと考えられた。 次いで、胎生18日目の雌ラットの視床下部内側視束前野を摘出し、0.25%トリプシン処理後、1cm_2あたり、5000個の密度で初代分散培養を行い、エストロゲンの培養ニューロンに対する作用を走査電顕を用いて観察した。培地には10%牛胎仔血清を含むEagle MEMを用い、エストロゲン投与群にはエストラシオール17βを100ng/mlの濃度で投与し、コントロール群と比較した。細胞を培養開始後6,12,24,48,72時間後に固定し、走査電顕により観察を行った。 培養開始後12時間以内では細胞周囲にラメリポディアおよび成長円錐を有する微小な突起が観察されたが、エストロゲン投与群およびコントロール群とで差は認められなかった。培養開始後24時間以降、エストロゲン投与群で、1本の突起の伸長およびバリコシティーの増加が観察された。以上の結果より、エストロゲンは視床下部ニューロンの極性の確立やバリコシティーの形成に影響を与える可能性が示唆された。
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