研究概要 |
1.ミュータントマウスを用いた研究 (1)大脳皮質および海馬でのS-100βの発達障害を持つミュータントマウス(Polydactyly Nagoya)では大脳皮質および海馬の神経細胞死を基礎とした層形成の障害と同時にセロトニンニューロン系の発達障害を合併することを明かとした(Brain Res.633,1995)。 (2)このミュータントマウスおよび正常マウス脳組織からの縫線核と海馬の共培養の検討から、セロトニンニューロン系の発達障害はミュータントマウスにおける標的組織(海馬)からの神経栄養因子の欠乏によることを明らかとした(Brain Res.633,1995)。 (3)ミュータントマウスおよび正常マウス脳組織から海馬組織を摘出し、成熟マウスの海馬近傍へ移植し周囲環境がグリア細胞の蛋白発現に及ぼす影響および宿主からのセロトニン線維伸長を検討した。移植された正常海馬組織にはいずれの移植時期においても宿主脳組織と同様にS-100βがグリア細胞に発現し、宿主からのセロトニン線維が移植海馬組織の深部にまで進入していた。一方、ミュータントマウスの海馬組織ではS-100βの発現の遅延が認められ、移植2カ月後で宿主脳組織と同様にS-100βがグリア細胞に発現した。しかしながら、いずれの移植時期においてもセロトニン線維の移植海馬組織への進入は認められなかった。以上から、移植早期のS-100βの発現がセロトニン線維の移植組織への進入に深く係わることが明らかとなった(日本神経科学会1995,Soc.for Neurosci.U.S.A.1995にて発表)。 2.老齢ラットを用いた研究 老齢ラットの免疫組織化学による解析から、老齢ラット海馬歯状回におけるセロトニン線維の減少とグリア細胞におけるS-100βの発現の低下に相関性が認められた。
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