研究課題/領域番号 |
06680745
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
川村 光毅 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40048286)
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研究分担者 |
大山 恭司 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00255423)
川野 仁 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20161341)
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キーワード | 共焦点レーザー顕微鏡 / ドーパミンニューロン / マウス / 発生 / 放射状グリア / 中脳黒質 / チロシン水酸化酵素 / DiI |
研究概要 |
発生初期の脳では、脳室に面した神経上皮層で未分化な細胞が分裂を繰り返し、つぎつぎと幼若なニューロンを生み出している。神経上皮から生まれた膨大な数のニューロンは、それぞれ独特な移動様式により、それぞれの定着部位に落ちつき、軸索をのばして、高度な神経構築を形成する。私たちは、マウス中脳におけるドーパミンニューロンの発生過程における移動について組織化学的検索を行い、以下の結果を得た。(1)マウス胎仔の中脳切片のニッスル染色とチロシン水酸化酵素の免疫組織化学、およびブロモデオキシウリジン投与実験により、黒質緻密部と腹側被蓋野を形成するドーパミンニューロンが中脳基板内側部で生まれた後、最初腹側に移動し、その後外側に移動することを見い出した。(2)電子顕微鏡を用いて、ドーパミンニューロンの腹側への移動には放射状グリアの突起がガイドすることを明らかにした。さらに、放射状グリアの突起上には、ドーパミンニューロンの腹側への移動の時期に一致して(胎生11-13日)、細胞外基質分子の一種であるテネイシンが一過性に発現することを免疫組織化学的に証明した。(3)またドーパミンニューロンの外側への移動には、他のニューロンの軸索がガイド構造として存在することを神経軸索に含まれるニューロフィラメントの免疫組織化学的に明らかにした。(4)蛍光色素DiIを用いた逆行性標識法により、ドーパミンニューロンの外側への移動をガイドする軸索が、中脳の外側部に存在することを共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。さらに、DiIを中脳蓋側部に注入し順行性標識を行った結果、この軸索が中脳底部で交叉した後、対側の橋網様体へと下行することを明らかにした。 これらの結果は、今まで不明であった、中脳ドーパミンニューロンの移動の機序を明らかにしたものであり、すでに、神経発生の国際専門誌、Developmental Brain Researchに本年中に掲載されることが決定している。
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