研究課題/領域番号 |
06680748
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
有国 富夫 日本大学, 医学部, 教授 (70028348)
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研究分担者 |
並河 晶子 (山下 晶子) 日本大学, 医学部, 助手 (30246889)
志水 巌 日本大学, 医学部, 講師 (00125056)
酒匂 裕子 日本大学, 医学部, 講師 (90139139)
今田 正人 日本大学, 医学部, 助教授 (30203318)
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キーワード | サル / 運動野 / バイオサイチン / 錐体細胞 / 有棘星細胞 / 篭細胞 / 双房細胞 / 双極細胞 |
研究概要 |
ニホンサルの運動皮質(4野)の4b野にバイオサイチン・デキストランを注入して、局所のニューロンを染める方法により、4b野の、生理学的には手の領域に相当する皮質領域の局所神経回路を研究した。平成七年度の研究では以下に記す成果を得た。 水平方向に走る軸索を有する中型と小型の錐体細胞が中心溝の直前方に位置する4b野運動皮質の第III層の深部(IIIB層)にあった。その頂上樹状突起は細胞体の上端から上方へ脳軟膜に向かって出た。軸索は両錐体細胞体において、細胞体の側面から現れ、太い軸索初節を形成後、細くなり、中型錐体細胞のそれは内側方向へ水平に約800μm走った、また、小型錐体細胞の軸索は中心溝底へ向かって脳表面に平行して約150μm進んだ。これらの主軸索は上行、下行、斜行する多数の側枝を出した。しかしこれらの軸索側枝はIIIB層を越えることはなかった。軸索側枝のあるものは、錐体細胞や非錐体細胞の細胞体の近隣で、神経終末ブトンを形成するのがみられた。軸索樹の遍在した有棘星細胞が第V層の上部にあった。その樹状突起は細胞体の底部から下方に向かって出て、直ちに3本の太い枝に分かれ、多数の刺突起(spines)を備えていた。軸索は細胞体の側面から現れ、中心溝底へ向かって水平方向に約170μm進み、その間、軸索側枝をつぎつぎと出し、さらにこれらは分枝を繰り返し、細胞体の左上方の領域に広がった。篭細胞(basket cells)に由来すると見られる軸索が第V層に2本観察された。水平軸索が第V層内のバイオサイチン注入部から起こり、一本は内側方へ水平方向に800μm走った。他の一本は中心溝底に向かって脳表面に平行に650μm走った。この水平軸索は上行、下行あるいは斜行する短い軸索側枝を多数出した。これらの短い軸索側枝はしばしば、錐体細胞と推定されるニューロンの細胞体や頂上樹状突起の基部を覆うように軸索叢と終末ブトンを形成した。第V層の双房細胞において、その軸索は細胞体の内側面から現れ、内側方へ向かって水平に約400μm進み、その間に多数の上行、下行、斜走する短い側枝を出した。側枝のなかには非錐体細胞に接近して、そこに終末ブトンを作るかのような像を呈した。第V層の双極細胞において、その細胞体は紡錘錐形で、細胞体の上端と下端からそれぞれ一本の上行樹状突起と下行樹状突起が出た。上行樹状突起は脳表面に向かって垂直に300μm上行した。下行樹状突起は第2次樹状突起を出しつつ、白質へ向かって垂直に延び、約150μm進んだ所で急激に細くなり軸索となった。主軸索は下方へ更に150μm延び、その間多数の軸索側枝を出した。これらの軸索側枝は主軸索の周辺に終止した。あるものは未知ニューロンの細胞体に覆い被さるように分枝して終末ブトンを作た。 今回の研究により、運動皮質の第V層において観察された錐体細胞ならびに篭細胞の水平軸索は、運動皮質における隣接コラムを機能的に結合する神経回路と考えられる。その際に、情報はコラムから周辺の全コラムへ伝達されるのではなく、錐体細胞の水平軸索とその側枝の分布から判断して、周辺の一部のコラムへ伝達されるようである。
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