研究概要 |
脳において、基底膜と接触するアストロサイトの形質膜部分には、小型膜内粒子が四角配列した、Assemblyとよばれる特異な粒子集合体が高密度に分布している。しかし、このAssemblyの機能はまったくわかっていない。そこで培養アストロサイトを用いて、Assemblyが強く発現される条件を見出し、遺伝子工学技術を駆使して、Assemblyをコードすると考えられるcDNAの塩基配列を明らかにできれば、Assemblyの機能解明に到達できると考えた。そのためには、「培養アストロサイトにおいて、確実にAssemblyの発現促進条件を見出すこと」が出発点であり、本研究の目的であった。私どもは、Assemblyが高密度に分布する形質膜が常に基底膜に接触している事実に着目し、アストロサイトを細胞外マトリックス(ECM)成分でコートした培養皿で培養すると、ECM成分をコートしない場合に比べて、Assemblyの発現が促進されるのではないかと予想して実験を行なってきた。本研究で得られた主な結果は次の如くである。 (1)生後5日目のマウス大脳由来のアストロサイトを、IV型コラーゲン、ラミニンおよびフィブロネクチンの混合液でコートした培養皿で培養し、凍結割断法を用いてAssemblyの分布密度を対照群と比較する実験を3回行なった。そして、分布密度が明らかに2〜7倍増加するという実験結果が得られた。この発現促進効果はこれまでに報告されているいかなる効果よりも大きい。 (2)Assemblyが、Na,K-ATPaseのβサブユニットあるいはP糖タンパクではないかと予想し、これらの膜タンパクを強く発現している線維芽細胞と腎腫瘍細胞を凍結割断法で調べた。しかし、この予想に反してAssemblyを観察することはできなかった。従ってAssemblyは少くともNa,K-ATPaseのβサブユニットでもなくP糖タンパクでもないことが示唆された。
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