研究概要 |
アフリカマイマイ(Achatina fulica Ferussac)神経節より抽出したペプチド,achatin-I(Gly-D-Phe-Ala-Asp)を,この動物の巨大神経細胞,PON(periodically oscillating neurone)およびv-RCDN(ventral-right cerebral distinct neurone)に対して圧により局処投与して,興奮性の内向き電流を発生させた.このachatin-Iの作用に対する.細胞内情報伝達系のうち,cyclic AMP系およびcalmodulinの関与を調べるために,protein kinase Aの選択的なinhibitorであるH-89(N-[α-(p-bromocynnamyl-amino)ethyl]-5-isoquinolinesulfonamide),cyclic AMP phosphodiesterase inhibitorであるIBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine),またcalmodulim inhibitorであるW-7(N-(6-aminohexyl)-5-chlro-1-naphthalenesulfonamide hydrochloride)の作用を検定した. Achatin-Iにより発生するPONの内向き電流は,H-89の存在下で抑制され,逆にIBMXの存在下で軽度に増強した.これらの実験より,PONの場合には,achatin-Iにより発生する興奮は,cyclic AMP系の関与によると考えられた.このことは,先に確かめられたcyclic AMPの細胞内投与により,神経膜の脱分極が起こることと一致する.またW-7は,PONにおけるこの内向き電流をやはり抑制した.このことはachatin-Iの作用発現に,calmodulinが関与することを示唆するものである. 以上のように,PONについてはいくつかの実験結果が一致するが,v-RCDNについては,achatin-Iにより顕著な内向き電流が発生するものの.この内向き電流は,H-89,IBMXならびにW-7により,全く影響を受けなかった.この結果より,v-RCDNにおけるachain-Iの興奮作用の細胞内機構が,PONの場合と異なるのか,それとも使用したinhibitorの効果が,細胞の種類により異なるのかは,結論する事が出来ない.
|