研究概要 |
ウシ脳5kgより27、000倍活性の単一標本1.2mg(分子量80,000、サブユニット39,500のホモダイマー)に精製したピリドキサルキナーゼ(PL-K)を抗原として、ラット、マウスより抗体を得たが、単クローン抗体は数回の試みにもかかわらず得られていない。本抗体と交叉反応する家兎脳内PL-Kの免疫組織学的分布はカテコールアミン、ドーパミン、セロトニン産生ニューロンに強い局在を示した。また、本抗体と交叉反応するハムスター脳内PL-Kの変動が、レセルピン投与によるドーパミン、セロトニンの枯渇や、デオキシピリドキシン投与でのピリドキサルリン酸(PLP)の減少などの脳内活性アミンの変動刺激により誘導されるか否かを検討したが、これらの処置はPL-K活性ならびに、抗PL-K抗体によるウェスタンブロットで確認した蛋白量には有為な変化を及ぼさなかった。逆にPLP産生量で測定するPL-K活性はドーパミン、セロトニン添加でむしろ阻害され、しかもドーパミン-PLPの不可逆結合物も同定され、本物質は補酵素活性を示さなかった。これは従来考えられている様なPLP量はPL-K活性量の変動を介し調節されるよりも、活性アミン量の変動が直接脳内PLP量を調節している可能性が考えられた。しかし、当初計画したPL-K遺伝子のクローニングは未だ成功していない。この研究は、PL-K遺伝子のクローニングにより蛋白レベルで存在が予想された生理活性アミンの脳内PLP量調節機構とPL-Kの関与の程度が遺伝子レベルで明確となることで終了する。
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