1.BC-1RNAの発現に関与する生理的因子 BC-1RNAは動物の誕生後脳が成熟する過程で増加する。この現象を更に理解するため、我々は骨格筋をモデルとして解析を行った。その結果、a.筋肉が運動神経の支配を受ける胎児期に増え、出生後シナプスが成熟する過程で減少した。これらの増減と脳の結果とを合わせ考えると、BC-1RNAは中枢、末梢を問わずシナプスの形成過程や、それに伴った後シナプス細胞の分化過程で機能している事を示唆している。b.運動神経の除神経により増加した。この増加には、筋肉の活動度あるいは神経由来の因子が関与していると思われる。アセチルコリン受容体mRNAが除神経でup-regulationを受け、アセチルコリンエステラーゼmRNAはdown-regulationされる事を考えると、BC-1RNAはシナプスの形成や再生過程で機能していると考えることができる。 2.細胞内の局在性。in-situ法で調べた。adultではback groundを有意にこえるシナプスを得ることができなかった。これは、RNAの量が少ないことによると思われる。そこで、横隔膜をつかい、それをシナプスを含む部分とそうでない部分に分け、BC-1RNAの分布を調べた。その結果、BC-1RNAが神経筋接合部(NMJ)に局在する事はなかった。しかし、新生マウスの骨格筋をin situ法で調べたところ、BC-1RNAがNMJ以外の部分にクラスターを形成していることが示された。その意味は現在明らかでないが興味深い。 3.細胞内における輸送。BC-1RNA内部にはTB-RBPの認識配列がある。このタンパクはmRNAを微小管へ結合させると考えられている。現在、BC-1RNAを2次構造上のドメインに分け、それらにTB-RBPをふくめどのようなタンパクが結合するか調べている。TB-RBPの認識配列がある事は、BC-1RNAが微小管と相互作用しつつ樹状突起へ運ばれることを示唆している。 4.Y-boxタンパクのBC-1RNAへの結合。我々はBC-1RNAがRNPを形成していることを報告したが、そのRNPにはいわゆるY-boxタンパクが含まれている事がこれまでの知見から強く示唆されている。現在、このタンパクに対する抗体を調製し、解析に使う事をスタートさせている。
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