研究概要 |
本年度の実験は,確定妊娠マウスを自然分娩させ,出生1日目のマウスに1.0Gyのγ線を全身照射し,経時的にマウスをエーテル麻酔下でと殺し,摘出小脳をドライアイスまたは液体窒素で凍結し,下記の生化学的な検索を行った。 アポトーシスの指標酵素とされる組織トランスグルタミナーゼ(tTG)は,脳では非常に活性が低いことから,モルモットの肝臓よりDEAE-celluloseのイオン交換クロマトグラフィーによりtTGを分離抽出し,マウスを用いてモノクローナル抗体を作製した。γ線照射3,6,12時間後におけるマウス小脳の懸濁液をポリアクリルアミドゲル電気泳動し,更にニトロセルロース膜上にウェスタンブロットして,tTG抗体との免疫反応を検索した。しかし,ラジオアイソトープを用いて測定したtTG活性が,著しく上昇した照射後6および12時間におけるtTGの酵素誘導が,ウェスタンブロット検索では見られなかった。また,免疫組織化学的にもtTG抗体との陽性反応がみられなかった。何れも,モルモット肝臓のかTGとマウス脳組織のそれとが交差反応をしないのか,あるいは活性が低いために陽性反応が見られなかったと思われるが,今後,小脳からtTG蛋白を抽出したもので免疫反応を検索する予定である。 また,tTG活性が著しく上昇したγ線照射6および12時間後の小脳組織を液体窒素で凍結し,mRNAを抽出し後,mRNAをノーザンブロットし,牛の血管内皮細胞よりクローニングされたcDNAを用いて,tTGのmRNAレベルでの誘導について検索したが,何れも陽性反応が見られなかった。現在,このcDNAを用いてin situ hybridaizationを行って検索している。
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