研究概要 |
本年の実験は,確定妊娠マウスを自然分娩させ,出生1日目のマウスに1.0Gyのγ線を照射し,経時的にマウスをエーテル麻酔下でと殺し,摘出小脳について下記の生化学的な検索を行い以下の結果を得た. 1.γ線照射後より経時的にマウス小脳を摘出し,^<35>S-メチオニン添加の緩衝液中(37℃)で新生タンパク質をpulseラベルした後,放射ラベルされた小脳のタンパク質を二次元電気泳動しkillerタンパク質の発現を検索したが,γ線照射群と対照群との間にはラベルされた新生タンパク質の分布には変化が無く,いわゆるアポトーシスに伴うkillerタンパク質の誘導は見られなかった. 2.組織トランスグルタミ-ゼ(transglutaminase:TG)の阻害剤のmonodansylcadaverineをγ線照射1時間前に皮下投与(10mg/kg)し,TG活性の変化及びDNA断片化などによりアポトーシス阻害の有無を検索した.皮下投与された10mg/kgの阻害物質の濃度では大きな変化は無く,投与量を増加させると新生児マウスが死亡した. 3.γ線照射2時間前のリチウム(10μ/g)を皮下投与すると,外顆粒細胞層において,形態的なアポトーシスの指標である核濃縮細胞の出現頻度の上昇時間が,リチウム非投与のγ線照射群に比べて約3時間遅延して発現した.リチウムは,phosphoinsitideの代謝回転およびGタンパクへのguan ine-nucleotideの結合を阻害することから,放射線誘発アポトーシスのシグナルは,cyclic-AMPまたはphos phoinositideを介して伝達されることが示唆された.
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