1、PC12D細胞は、キヤピラリーよりNGFを与えると、数分の間に細胞のキヤピラリー側に神経突起の出芽がビデオ観察された。NGF放射を細胞集団に対して長時間行なうと、長い神経突起が、NGFに向かって伸張した。NGFが細胞の局所に作用し、神経突起の発芽を誘導する事を示す研究成果として発表した。ポリエチレングリコール処理によって融合した多核細胞を作製すると、NGF処理によって、大型の神経突起が多数伸張する。ここにNGF放射を行なったところ、同じ細胞体からの突起のうち、NGF濃度の高いところでは伸張が見られ、逆に低いところでは萎縮が認められた。神経突起に於ても、NGFはその局所で作用し、NGF分子との反応によって新たな突起の成長が誘導される可能性が示された。 2、PC12D細胞では、蛋白燐酸化酵素阻害在であるスタウロスポリンが、NGF同様の神経突起誘導能を示す事実を発表した。神経突起誘導に、MAPキナーゼの介在が推測されている事実と矛盾する。MAPキナーゼは活性化すると核への移行が報告されている。PC12D細胞に於て、NGFやbFGF処理すると酵素活性の上昇および核移行が認められているが、スタウロスポリンとdbcAMPには類似した反応が見られなかった。以上の結果は、スタウロスポリンとdbcAMPによる神経突起の誘導にはMAPキナーゼは介在しない事を示唆している。
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