研究概要 |
中隔核における空間および物体の認知・記憶機能を明らかにするため,サル中隔核から単一ニューロン活動を記録し,サルの居場所の違いにより呈示物体の意味が変化する条件課題(場所依存性非対称性物体識別課題:PGN課題)および呈示物体の意味が常に一定である非条件課題(場所非依存性非対称性/対称性物体識別課題:AGN/SGN課題)に対する応答様式を解析した。 その結果,サル中隔核より430個のニューロン活動を記録し,そのうち190個が何らかの応答を示した。I.これら応答ニューロンの30.5%はサルの居場所に関して識別的に応答した。II.条件(PGN)および非条件(AGN)課題の両課題をテストできた中隔核ニューロンのうち,59.7%はPGN課題に対してだけ,その意味(Go-報酬/Nogo-無報酬)に応じて識別的に応答した。このような条件課題特異的ニューロンは,本研究により初めて見出され,中隔核が条件性・場所-物体識別課題の遂行に重要な役割を果していることを強く示唆する。III.PGNおよびAGN課題に非識別的に応答したニューロンに対してさらにSGN課題をテストし、ほとんど(90.5%)は物体の報酬性(報酬/無報酬)に対して識別的に応答した。これらニューロンの応答性は,消去学習により物体の報酬性を直接変化させてもそれに応じて変化することからも確認された。以上から中隔核は,居場所の認知→居場所の違いにより変化する物体の意味の識別という一連の過程を統合する上で重要な役割を果たしていることが示唆される。
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