研究概要 |
キンドリング刺激回数の増加による扁桃核頻回刺激直後の嗅内野皮質の興奮性シナプス伝達の増強(PTP:Augmentation)の単シナプス成分と多シナプス成分での増強の特性の相違とキンドリング後発射の発達との量的関係、NMDA受容体のantagonistの作用について次のような結果を明らかにした。 10Hz,100発の頻回刺激を慢性電極から与え毎回のトレイン刺激中のfield potentialの全ての反応の頻度増強作用ならびに各刺激の直前、直後約30秒間にテストパルスで調べた反応の変化による頻回刺激直後増強作用を比べると、頻回刺激直後の増強作用は、まず最初に単シナプス性興奮伝達成分に生じそれに引き続いて多シナプス性成分の増大が生じることが明らかにされた。更にトレイン刺激回数の増加につれて、単シナプス性成分の増大よりも多シナプス性成分の増大がより著明になった。この頻回刺激直後増強作用は刺激回数の増加に応じて、特に多シナプス性活動成分が増強し個々の反応波形の振幅と持続が増大するため、後発射が約30秒以上に延びるようになると殆どの反応が個々の後発射反応と重なった。そのため後発射が30秒以下の場合について重疊した興奮性反応を除外して加算平均し、その反応面積を求めると頻回刺激直後の増強作用は後発射の持続時間の延長と統計学的に有意な正の直線関係が認められ、後発射の持続時間とトレイン中の頻度増強作用および頻回刺激直後の増強作用の重回帰解析から両反応の増大に応じ後発射が有意に増大する事がわかった。更に頻回刺激直後増強作用はNMDA受容体antagonistのCPPで著明に減少し後発射の欠落あるいは短縮に応じて特に多シナプス成分が減少した。以上の結果よりキンドリング刺激シナンプス伝達の頻回活動を起こさせると頻回刺激直後の増強作用や頻回刺激中の促進現象は単シナプス性のみならず、特に多シナプス性に長期増強を生じ、後発射の延長や痙攣発作の発達の生理学的原因となっている事が明らかになった。
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