研究概要 |
扁桃核の頻回刺激を繰り返すと、後発射の持続時間が延長し最初は痙攣を生じなくっても、漸次痙攣発作が拡大していく際、嗅内野皮質の頻回刺激直後の興奮性シナプス伝達についても単シナプス成分と多シナプス性成分の両過程に増強作用のある事はこれまでの研究から明らかにしてきたが、今年度は、扁桃核の頻回刺激直後の反応(PTR)と後発射の関係について嗅内野皮質と海馬で、更に詳細に調べた。頻回刺激直後の増強作用(augmentation;増加反応)は十数秒から数十秒のオーダで生じる事が以前から知られているので、トレイン刺激(10Hz,100pulses)直後約30秒間の単発刺激(0.3Hz,10pulses)に対するPTRに生じる増強作用をaugmentation(増加反応)の指標としそのコントロールとしてのトレイン刺激直前の単発刺激(0.3Hz,10pulses)に対するテスト反応の大きさと比べPTRとテスト反応を加算平均し興奮性反応を示す陰性電位について基線との間の反応面積(mV x ms)を測定した。トレイン刺激の刺激強度が後発射閾値よりも約50-100mV以上低いと、嗅内野でトレイン刺激直後の増強作用は全くみられないが、後発射閾値よりも25mVのみ低いときには明白にaugmentationが生じ、後発射を生じるまで刺激強度を増大させると、それに応じて単シナプス性成分に関して反応の大きさが増加し、頻回刺激直後の増強作用の出現には閾値のある事が推測された。更に嗅内野では後発射閾値の強さではキンドリングトレイン刺激の回数の増加につれ最初に単シナプス成分が主に増強し、より遅いキンドリング刺激で多シナプス成分は著名に増大し、両成分を含んだ反応面積として後発射との関係を調べると統計学的に有意の直線関係がみられた。しかし海馬では、頻回刺激直後の興奮性シナプス伝達は2-3回後のトレイン刺激で始めて増強されるようになった。これらの結果は頻回刺激直後の増強作用が刺激部位に続く神経路の最初のシナプス部位から順次生じ後発射の延長の電気生理学的一因となって作用している事がわかった。
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