研究概要 |
(1) 電気生理学的に“セロトニン感受性K^+チャネル"の存在が確認されているアメフラシ腹部神経節よりRNAを抽出した。この組織は微小であるため、限られたIst strand cDNAをPCR法により増幅することによりcDNAライブラリーを調製した。また、アメフラシ中枢神経のcDNAライブラリーも常法により調製した。既に報告のあるK^+チャネルの一次構造を比較すると、推定膜貫通領域S5とS6の間に極めて保存性の高い領域が存在する。この領域に着目してオリゴヌクレオチドプローブを作成し、前述のcDNAライブラリーのスクリーニングを行った。その結果、577および730アミノ酸残基のタンパク質をコードする新種のcDNAクローンを単離した(aKv5.1,aKv6.1)。卵母細胞およびアメフラシ神経細胞に特異的に発現させたaKv5.1は、全く不活性化過程の見られないK^+チャネル特性を示し、アメフラシの特定した神経細胞での発現実験によりaKv5.1が神経細胞の静止膜電位および発火のコントロールに寄与することが判明した。さらにaKv5.1は、他種のK^+チャネルと会合することによりセロトニン感受性K^+チャネルと近い特性を持つ可能性が示唆された。現在、aKv6.1の発現実験と併せて、この可能性について検証を行っている。 (2) “ATP依存性K^+チャネル"cDNAの単離にあたり、マウスおよびヒト膵臓poly(A)^+RNAよりcCNAライブラリーを調製した。この間に、他のグループより心臓のATP依存性K^+チャネルの構造が発表されたため、それに基づきプライマーを合成しPCR法により内向整流K^+チャネルの構造的特徴を有するクローンを取得した。現在、コ-デイング全領域をカバーするcDNAの単離を行っており、これを用いて膵臓ATP依存性K^+チャネルの機能解析および培養細胞系での発現実験を行う計画である。
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