研究課題/領域番号 |
06680799
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | (財)東京都精神医学総合研究所 |
研究代表者 |
上田 健治 (財)東京都精神医学総合研究所, 分子生物学研究部門, 主任研究員 (90261180)
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研究分担者 |
山本 明広 財団法人東京都精神医学総合研究所, 分子生物学研究部門, 技術員(助手)
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キーワード | NAC / NACP / アルツハイマー / アミロイド / synuclein / PNP14 / シナプス / シグナル伝達 |
研究概要 |
筆者等は精製アルツハイマー病(AD)脳アミロイドから、未知の成分NAC(Non-AβComponent)を見出し、その前駆体蛋白質(NACP)のcDNAをクローニングした。精製アミロイドからペプチドが分離され、その局在が電顕レベルでアミロイド繊維状に同定されたのはAβに次いでNACが2番目である。NAC/NACPがADにおいて異常にプロセスされてアミロイド形成に関与しているとすれば、NACPの発現はADにおいては少しく異常を来たしているか、又は機能が完全に発揮していない可能性がある。いずれにせよ、NAC/NACPのAD病理への関与の意義を正しく理解するためには、先ずその生理機能を知る必要がある。今回、ヒト胎児脳ライブラリから新たに短鎖型NACP112cDNAがクローニングされた。これは先の長鎖型NAC140と比べて28アミノ酸短く、mRNAの選択的スプライシングによるイソ型であると考えられた。PCRとNorthern解析により、NAC140とNACP112は年齢と組織依存的に発現が制御されていることが示された。相同検索の結果、今回同定されたインサート部位と、T細胞抗原受容体のCD3ζ鎖の細胞内ドメインとに相同性が見出された。ζ鎖の細胞内ドメインは細胞内シグナル伝達に必須であることから、NACPは細胞内シグナル伝達機構に関わっている可能性があり、NACPの生理機能の一端が示唆された。 最近NACP様の分子がクローニングされ、NACPが遺伝子ファミリーを形成する事実が明らかになった。それはシビレエイとラットのsynuclein、及びウシPNP14であり、NACP140はラットsyn1と、又、ヒトβ-synucleinはウシPNP14と相同遺伝子産物であった。従ってNACPファミリーは、魚、ラットからヒトまで種を超えて分子構造が高度に保存された蛋白質群を有することが判明し、その局在は前シナプスにあることから中枢神経系における生理機能の重要性が推察された。
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