研究概要 |
本年度は、炎症メディエーターであるブラジキニンに対する痛み受容器の反応に、protein kinase Cの活性化が関与しているかどうかを明らかにすることを目指した。 昨年度同様にイヌ精巣-上精巣神経標本を用い精巣ポリモーダル受容器からの単一神経活動記録を行ない、protein kinase Cを活性化するフォルボールエステルのひとつphorbol 12,13-dibutyrate(PDBu)を用いてブラジキニン反応への影響を調べた。熱反応に対する効果を調べた場合と同様にPDBu10^<-7>Mを5分間前投与したところ、熱反応の場合とは逆にブラジキニン(10^<-7>M)に対する反応は減弱し、その効果は10分後には消失した。そこで投与方法を変えてブラジキニンと同様に投与したところ促進が観察され、この効果も10分後には消失した。このようにフォルボールエステルの効果が投与時間により異なることが明らかになった。また、ブラジキニン10^<-8>Mに対する放電反応は、protein kinase C阻害剤であるstaurosporine10^<-6>Mの投与により減弱した。これらの結果よりポリモーダル受容器のブラジキニン反応にもprotein kinase Cの活性化が関与していると考えられる。フォルボールエステルの前投与によるブラジキニン反応の抑制は、おそらくブラジキニン反応に介在する中間段階にprotein kinase Cを介して抑制される系が存在するためと考えられる。最近フォルボールエステルがprotein kinase Cの活性化を介して5分以内にphospholipase Cを抑制するとの報告があり、これも一つの可能性であると考えられる。
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