研究概要 |
1.異常運動の発現とサル淡蒼球ニューロンの活動 異常運動モデルのサルの大脳基底核淡蒼球のニューロン活動を調べ、異常運動に関係した活動の変化があるかどうかを調べた。サルの視床下核ニューロンの活動を一時的に薬物の微量注入により低下させ、異常運動を起こした。具体的には、無麻酔のサルの視床下核に挿入した薬物注入管から抑制性神経伝達物質類似薬物ムシモルを微量注入(10mM,400nl)し、注入後5-10分には注入と反対側の手と足に異常運動を認めた。この時、淡蒼球に慢性的に留置した電極からニューロン活動の記録を行って、異常運動に関係した活動の変化があるかどうかを調べた。現在までの所、淡蒼球内節および外節のニューロンで異常運動に対応して異常な活動を示す例は見つかっていない。今後、淡蒼球内での探索の範囲を広げ、ニューロンの活動の記録数を増やして結論をだす。 2.サル視床下核ニューロンの活動低下と随意運動の遂行障害 サルの視床下核ニューロンの活動を一時的に低下させた時、訓練した課題運動の遂行に支障が生ずることを新たに見いだした。あらかじめ手でボタンを押す運動課題を訓練したサルで、薬物の微量注入により視床下核ニューロンの活動を低下させ、薬物注入の前後の課題運動の遂行の様子を観察した。視床下核ニューロンの活動停止後、2-5分で課題運動の障害が起こった。具体的には、キ-押しの頻度が下がったり、手を正確にキ-の位置に持っていけなくなった。薬物注入後、随意運動の遂行の障害の現れる時期は異常運動の発現する時期に先行し、従来は行動の異常が検出できなかった時期にあたる。異常運動の発現メカニズムの研究のために有用と思われる。
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