研究概要 |
ヒトのChediak-Higashi症候(CHS)は常染色体劣性の遺伝性疾患であり、ヒト以外にもウシ、ネコ、ミンク、マウス等で報告されている。本症の主微はリンパ球、好中球の細胞質の巨大顆粒化であり、その結果CHS患者の皮膚および毛髪はメラノゾームの異常な融合により淡色化する。マウスのCHSに相当する突然変異体は毛色の淡色化のためベ-ジュ(遺伝子記号:bg)マウスと命名されている。本症についてもラットのモデル動物の開発が期待されていたが、浜松医大・動物施設で維持されていたDA系ラットに起こった毛色の突然変異体がこれに相当することがわかり、DA-bg系と命名された。 この系統については血液学、病理学および寄生虫学的な検索がなされているが、bg遺伝子の染色体へのマッピングがなされていなかったので今回、以下の手順で試みた。 1、マウスのbg遺伝子は第13染色体に位置しているので、ラットについてマウスの第13染色体と相同性のある第17染色体に注目し同染色体に位置することがわかっているマイクロサテライトマーカー(MSM)を8個入手した。 2、これらの内6個のMSMについてPCR法によりDNA増幅することができたので、それらについて浜松医大・動物施設で維持されている近交系ラットについて肝臓より抽出したDNAを用いてPCRを行ない各系統間での増幅産物の多型の有無を調べた。 3、その結果、DA-bg系とBN系の間でProlactin(PRL)とCholinergic receptor,muscarinic3(ACRM)に多型が認められた。そこで、この両系でBCF_1を80匹作出し、連鎖を調べたところ、PRL-bg間で30cM、ACRM-bg間で23cM、PRL-ACRM間で11cMの連鎖関係があり、ラットのbg遺伝子は第17染色体にマッピングされた。 CHSの発症する分子機構は未だ明らかにされておらず、本系統を用いたさらなる展開が期待される。
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