1。変異マウス系統の維持:変異マウスを用いて、遺伝的解析を行うためにW^<19>をヘテロに持つC3H系統(C3HeB/Fe^<C+>W^<19>)マウスの維持を行っている。また遺伝的背景の表現型に及ぼす影響を調べるために、129/Sv-ter系統にW^<19>の導入を行っている。 2。W^<19>/+マウスの特徴:ヘテロ個体を通して変異を維持する過程で、欠失領域に存在する遺伝子が発生過程の体の大きさの決定に関与する可能性が示唆された。計算上、野性型とヘテロとを交配した結果、生まれる子供の50%はヘテロである。ところが、実際にヘテロは約10%であった。この事実はW^<19>/+個体でも、ある割合で発生中に致死となることを示す。また生まれたヘテロ個体は野性型と比較して、明らかに体が小さく、体重は野性型の60%であった。これらの結果は、W19変異ハプロタイプにおける欠失領域に存在していた遺伝子が正常発生の過程で体の大きさを規定しており、極端に発育の悪い個体は生まれる前に致死となることを示す。欠失領域に存在する既知の遺伝子はすべてチロシンキナーゼ型、膜受容体をコードしており、これらが成長に関与するのかもしれない。あるいは未知の遺伝子も同種の受容体をコードしており、その影響の可能性もある。 変異胚の遺伝子型:雌雄のヘテロ個体を交配し、得た胚の発生過程における形態変化と、その胚の遺伝子型とを調べた。着床前の胚からゲノムDNAを抽出し、PCRにより遺伝子型を調べた所、予想通り、約25%が変異胚であった。この結果は、着床前の段階ではW^<19>/W^<19>胚も形態的には正常に発生することを示す。
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