W19突然変異はヘテロでは体表の特定の場所に色素細胞が欠如していること、またホモで発生初期に致死となることが既に報告されていた。本研究によりヘテロではこれまでに知られる異常とともに発生後期に胚全体のサイズに影響が現われ、生まれる時には野性型と比較して体重が約70%であることが明らかとなった。このことはW19遺伝子座に存在するc-kitを含む複数の成長因子受容体が突然変異により欠失したことでW19/+ではそれぞれの発現量が減少するため、体の大きさを十分に制御できないものと考えられる。さらに生まれる個体の遺伝子型を調べるとW19の伝達率が低いことがわかった。このことは個体によってはサイズが極端に小さくなり、生まれることができない可能性を示す。 W19/W19胚は着床後、早い時期に致死となることが報告されていたが、これまでの研究は子宮内に存在する胚を組織学的に解析した結果しかなかった。本研究では胚を体外に取り出し、子宮環境から隔てた条件で培養して胚そのものの異常を観察した。その結果、胚盤胞は透明帯から脱するまでは正常胚と形態的に見分けられないが、培養ディッシュ上に接着した後のoutgrowthに異常が確認された。すなわち、W19/W19胚は接着はするが、その後の栄養外胚葉由来の細胞の巨大化と増殖能が不十分であることがわかった。このことは子宮に着床したあとの浸潤がうまくいかず、胚体外組織が胚発生を支持できないものと予想される。
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