実験動物領域でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による汚染が起きていないかを検討することを目的として、動物実験施設内の実験動物、環境及び飼育者から本菌の分離を試み、出現頻度の検討をおこなった。検索箇所は、(1)ヒト:飼育を担当している飼育者の鼻腔のスワブ、(2)環境:一部の飼育室内の飼育器材や床面などを拭き採ったスワブ、(3)動物:施設内で飼育中のマウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ブタ及びヤギの新鮮糞便と被毛のスワブを対象とした。 その結果、6/12例の飼育者、3/8例の実験台、4/18例の床面、14/25例のケージ、5/26例の飼育棚、90/131例のラット、25/292例のマウス、1/52例のウサギ、2/6例のサル、14/82例のイヌから黄色ブドウ球菌が分離された。つぎに、これらの黄色ブドウ球菌がMRSAであるか否かの確認をおこなうために、4%食塩加ミューラーヒントン寒天培地にoxiacillinを6μg/ml添加したMRSAスクリーン培地、seftizoximeを用いたディスク試験により検討したところ、すべてメチシリン感受性株であった。そこで、抗生物質を投与された経緯のあるマウスを対象にさらに検討をおこなった結果、2/18例からMRSAが分離された。 以上の成績より、動物実験施設内で飼育されていた実験動物では、抗生物質の投与を受けた経緯のある動物からはMRSAが検出されるが、その他の一般の実験動物にはMRSA汚染が無いことがわかった。
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