研究概要 |
前年度の予備調査の結果,薬剤耐性菌の検出(分布調査)と分離(菌株採取)には,九州地区の実験動物繁殖施設(生産企業)と大学付置動物実験施設が最適と推測された.そこで,熊本県内の5か所の繁殖施設と九州管内の5か所の実験施設を対象とし,マウス,ラット,モルモット,ウサギの新鮮糞便からDHL寒天,SF寒天および卵黄加MS寒天を用い,腸内細菌そうの構成菌として大腸菌(E. coli),レンサ球菌(Str. faecalis),ブドウ球菌(Staph. sureus)の分離を試みた.そして,分離株について,アンピシリン,セファロリジン,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン,カナマイシ,ゲンタマイシン,エリスロマイシン,スルファメトシンに対する薬剤感受性を常法に基づいて検索した.その結果,すべての菌株がいずれかの薬剤に対して耐性をもち,そのパターンは多様で,各種の薬剤耐性菌が実験動物から広く検出され,感染病対策といて一切の化学療法剤の使用歴がない繁殖ならびに実験施設の実験動物からも薬剤耐性菌が分離された.この知見は,化学療法剤と接触がない実験動物から原則として薬剤耐性菌が分離されないとする過去の私たちの結論を否定するもので,実験動物に腸内細菌そうに薬剤耐性化が進行していることを示唆している.また,実験動物を用いた院内感染モデルを作出するという当初の私たちの計画を断念する結果となった.
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