研究概要 |
昨年度に引き続き,人間の認知・言語理解過程と脳律動情報との関係について研究を進め,成果を得た. 1.神経・シナプス回路による認知・言語関連律動活動の発生過程のモデル化に関し,皮質-皮質下系を,感覚野-視床,海馬-中核に設定して,各種律動波の生成の神経・シナプス回路に基づくモデルの作成を行い,シミュレーションにより動作を解析した. 2.脳波・脳磁図から単一試行の律動情報を抽出する時系列解析法の開発に関し,平面スプライン補間とテンプレート法適応相関フィルタをもとに,単一律動バースト抽出と生成源推定アルゴリズムを開発し,それぞれの律動波に最適のテンプレートと三次元表示法を求めた. 3.認知・言語行動時の脳律動情報を収集するための実験検査法の開発に関し,それぞれの認知・言語課題における各種律動情報を,本研究による実験システムと既存の脳波・脳磁図装置および眼球運動装置を用いて収集し,フラクタル解析等を通じて律動構造の特徴を調べた. 4.認知・言語行動時の脳律動情報の特徴解析と脳内伝達・調節物質代謝産物との比較に関し,認知・言語課題における各種律動情報の特徴解析を基に,課題遂行時の血中代謝産物の分析結果との相関性を求め,作成したモデルの妥当性を検証した. 5.脳律動情報に基づく認知・言語行動およびその障害モデルの構築と臨床応用に関し,得られた神経・シナプス回路の動作をもとに,認知・言語障害者の脳内伝達物質・調節物質の代謝異常,脳波・脳磁図および眼球運動に見られる律動情報の変調の三者間の関係の神経情報処理モデルを構築した。
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