研究課題/領域番号 |
06680851
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奈倉 正宣 信州大学, 繊維学部, 教授 (70021178)
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研究分担者 |
大越 豊 信州大学, 繊維学部, 助教授 (40185236)
箕浦 憲彦 通産省工業技術院, 物質工学工業技術研究所, 室長
田坂 雅保 信州大学, 工学部, 教授 (90020974)
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キーワード | ポリビニルアルコール / ハイドロゲル / 高含水 / 高酸素透過係数 / 不凍水 / 結晶化可能な束縛水 / 自由水 / 高弾性率 |
研究概要 |
本年度は各種含水率の透明で且つ高弾性率の高含水ゲル膜を作製することに成功したので、これらのゲル膜の酸素透過性と水の状態に関する研究を中心に行い以下の結果を得た。 【酸素透過性】ポリビニルアルコール(PVA)とアニオン性高分子のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(NaPSS)とを各種ブレンド比でブレンド後キャストし、更に水で膨潤させNaPSSを溶出させることにより透明で高弾性率の各種含水率のPVAハイドロゲルを作製した。これらのPVAハイドロゲルの酸素透過係数は膜の厚さ方向の不均一構造の存在により膜厚に依存し、膜厚無限大への外挿値から得た見かけの酸素透過係数を不凍水以外の含水率がほとんど変化しないにも拘わらずNaPSSの初期ブレンド率が増すと高くなることを明らかにした。この理由はこれらのゲル膜の酸素透過が可能な不凍水以外の水分率は大きな差がないことから、ブレンド分率が高いものほどNaPSSの溶出によって酸素通過経路の孔径が大きくなるか単純になることで説明された。このゲルを更にホルマ-ル化し化学架橋を行った耐熱水性のゲル膜は優れた透明性、含水性及び酸素透過性を維持することを見い出した。 【水の状態】DSCによるPVAハイドロゲル中の水の融解挙動から、自由水と結晶化可能な束縛水の存在が明かとなった。また、乾燥によって含水率を変えた試料のゲル1g当たりの水の融解熱の零外挿から不凍水の量を求め、この値とPVAハイドロゲルの含水率を用い、不凍水以外の水1g当たりの融解熱を求めたところ自由水のそれよりも低く、結晶化可能な束縛水の1g当たりの融解熱は自由水のそれより小さいことを明らかにした。パルスNMRに依る水の状態の検討からは、室温のゲル中の水は自由水より運動し難い状態を取っていることを明らかにした。しかし結晶化可能な束縛水、及び自由水の区別は不可能であった。この様なパルスNMRとDSCとの結果の相違はDSCで観測される水は凍結状態にあることに依ると考えられる。
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