研究概要 |
本年度、瞳孔径変動および関連の深い心拍、呼吸信号を同時記録する新しい実験を行うと共に生体時系列信号の解析手法について検討を加えた。方法論的検討として心拍等点時系列として観測される信号の解析法について検討し、特に心拍ゆらぎ現象の1/fスペクトル解析にDCSI(Derivative of Cubic Spline Interpolation)法が有効であることを示した。(裏面研究発表3,5,6)また、呼吸信号のように狭帯域信号を入力とする場合のシステム同定に有効な「雑音注入法」と呼ぶ方法を開発した。これは、入力信号の帯域と相補的なスペクトル構造を持つ雑音を入力に注入することによりシステム伝達関数の推定を安定化する方法であり、呼吸から瞳孔径、呼吸から心拍などへの伝達特性推定に有効に応用し得る(研究発表2)。実験的な研究として、瞳孔径変動、心拍、呼吸信号の同時記録を行い瞳孔径変動の基本的な性質を明らかにした。すなわち、呼吸性変動の存在をスペクトル解析により初めて定量的に示し、さらに20分間の長時間記録から0.1Hz以下の低周波帯域で1/fスペクトル特性、0.1Hz以上の帯域ではf3乗分の1の特性を示すことが明らかになった。この結果から瞳孔径変動が心拍ゆらぎと同様自律神経機能の無侵襲的状態推定に応用し得ること、及び心拍ゆらぎが点時系列という限られた情報に拘束されるのに比べ連続過程であることからより高周波数までその特性を調べることができるなどの利点をもつことを明らかにした(研究発表1,4)。
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