研究概要 |
従来,反応時間などの行動指標を用いた研究では,プライミング効果は主にプライムと意味的に関連のあるターゲットに対する促進効果として取り上げられてきた.他方,事象関連脳電位(ERP)を指標とした研究は,非関連対のターゲットに出現する後期陰性波(N400)に注目してきた.本研究では,行動指標を用いた研究とERPによる研究の成果を統合するために,促進効果に対応するERP成分の特性を検討した. 10名の被験者にプライム及びターゲットを継時的に視覚呈示し,ターゲットが単語であるか否かを判断させ,できるだけ速くボタン押しによって報告するように求めた.プライムとターゲットの意味関連性について,意味カテゴリ条件及び反意語条件の2条件を設定した.意味カテゴリ条件ではプライムとしてカテゴリ名(例えば,“動物")呈示し,ターゲットはそのカテゴリに属する語が呈示される場合(関連)と属さない語が呈示される場合(非関連),そして非単語の場合を設けた.反意語条件では,例えば,“低い"というプライムに対して,関連では期待される反意語(“高い"),非関連ではそれ以外の単語,あるいは非単語のいずれかをターゲットとして呈示した. 反応時間では促進効果,抑制効果ともに反意語条件の方が大きかった.ERPでの促進効果は後期陽性波の潜時の短縮として現れた.さらに,N400振幅はカテゴリ条件で大きく,反応時間にみられる抑制効果を直接反映するのではないことが示された. また,厳密には意味プライミングではないが,より大きな促進効果が得られる同一単語の反復時のERPも検討した.その結果,表記まで一致する場合にERPに対する反復効果が最も大きかったが,表記を変化させた場合でも,ERPに反復効果が認められた.
|