今年度に行なわれた研究は、(1)当初の実験のための刺激となる箱庭作品の収集、(2)その整理と分析、及び、(3)実験の刺激として使用するための加工に大別される。 (1)被験者は、平成5年度の科学研究費補助による研究において依頼した大学生20名(男子5名、女子15名)であった。各被験者に、前回の箱庭制作以来ほぼ1年の間隔を置いて、改めて箱庭作品を作ってもらった。(前回と同一の被験者という条件もあったため、謝金を用意した。また実験期間も3ヵ月にわたった。) (2)得られた作品について、玩具の数や種類などの数量的な分析を行なっている(パーソナル・コンピュータへの入力などの作業に謝金を用意した)。さらに、1年前の作品との共通点や変化などで「どのような連続性が考えられるか」という視点について、様々な意見を得るように努めた(旅費として使用)。そして、そのような連続性や変化をどのように数量化して統計的な分析を行なうか現在検討中である。(この点で新たに(3)の実験も加えたいと考え、その準備もあって当初の実験の実施を遅らせることになっている。) (3)当初の実験では箱庭作品の写真をそのまま使うだけであったが、それだけでなく、コンピュータによって様々に画像処理を施すことで各作品の特徴を数量化する方法を模索中で、そのための作品映像のコンピュータへの入力などの作業が進行中である。(備品として映像処理に能力を発揮するパーソナル・コンピュータなどを購入し、またデータの整理や入力に対して謝金を用意した。) 今年度の研究は全体的にやや遅れがちではあるが、その成果は『心理臨床学研究』(日本心理臨床学会)や『箱庭療法学研究』(日本箱庭療法学会)などの専門学会誌への投稿を予定している。
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