本研究では、高校教育改革の中核をなす単位制高校に焦点を合わせて、その構造と機能について理論的・実証的な検討を加えた。 単位制高校は、従来の「定時制課程」の立て直し策として位置づけられる場合が多いが、その内実は実に多様である(総合学科をはじめ全日制課程でも導入されつつあるが)。単位制高校は、「保護救済機能」「生涯教育機能」「伝統夜学機能」「進学準備機能」などいくつかの機能を果たしているが、これら社会的諸機能の濃淡は、それぞれの学校の歴史・社会的文脈と個々の学校組織の意思決定によって決定される。とくに、単位制高校の多くは、不登校経験者を窮屈な<学校空間>から解き放つという点で有効に機能している。しかし、単位制高校の生徒と教師を対象にした聴き取り調査の結果によれば、「不登校経験者」の急増によって生徒文化の二極化が生じていることが明らかになった。また、単位制高校の抱えている問題状況は近代社会の<揺らぎ>の縮図でもあり、個別性と共同性をどのように調和させていくかという現代的な課題と通底していることが見いだされた。さらに、不登校現象が近代社会の編成原理(「機械論的自然観」「競争と効率の崇拝」「個人の物象化」等)への<異議申し立て>であるとすれば、単位制高校をめぐる諸問題も個別学校組織の問題として矮小化して捉えるのではなく、教育と社会のあり方そのものへの問題提起として読み取ることの重要性は自ずから明らかである。
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