近年のドイツでは、ドイツ統一に伴う財政負担の軽減を直接の契機として、経済政策などの分野で民活・規制緩和政策をとっており、都市建設の領域もその例外ではない。 しかし、わが国における近時の同様の政策と比較した場合、彼我の間にはなお質的ともいうべき差異が存している。90年の政令および93年法によれば、通常は許可されない建築案が許可されるための要件として、(1)当該建築案の策定プロセスに市町村との協議が必要とされること、および(2)事業主体が地区施設整備費用(の一部)を負担すること、が挙げられている。(2)についてはわが国の都市計画法制の手法(例:総合設計制度)とも一見類似しているようにみえるが、ドイツでのそれは、あくまでもBプランの策定が前提とされており、かかるBプランからの乖離が問題とされている点に注意する必要がある。また、(1)については、わが国の制度とも明確に異なるとともに従来のドイツ法則とも大きく異なる。すなわち、ドイツ法の原則は、市町村は、建築案のBプランとの適合性に関する審査権限しか有していないのに対して、90年政令および93年法では、建築案の策定自体に対して市町村の関与を要求しているのである。このように、上記の法令をみる限り、近時のドイツの都市政策は民活・規制緩和路線の導入と一面ではみなしうるものの、他面において、かかる施策が無秩序な都市建設へつながることを阻止しうる措置を同時に設けているのである。 なお、現在、研究成果を発表すべく草稿を作成している。
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