研究概要 |
今年度は,後援会と地域的な権力構造の関係について,フィールドワークによってデータを収集して実証分析を行うとともに,その理論的な含意について考察することを研究の目的としてきた. 中心的な研究対象としたのは,これまで私が行ってきた研究で扱った額賀福志郎後援会と,鹿島郡選出の茨城県議会議員本沢昭治の後援会である昭栄会,行方郡潮来町前町長今泉利拓の後援会である拓心会である.これらの後援会の中心的なメンバー約20名に対して,インタビュー調査を行った.また,1995年1月から2月にかけて行われた潮来町長選挙を現地にて観察した.この結果,地方政治家の権力関係が国会議員の影響力からかなりの程度,独立したものであることが明らかになった.国会議員は,かならずしも地方選挙に積極的に介入しない.特に,自分の支持が厚い地域の選挙に関しては,極力中立を保つことによって,自分の支持者の間の亀裂が自分に対する支持に影響しないように振る舞おうとするのである.国会議員が地方選挙に介入するのは基本的に,それが自分の勢力拡大ないしは維持に貢献する場合である. また,地域の政治権力構造によって,支持者が政治家の系列に忠実な場合と,無関係な場合とがあることも発見された. これらの成果は,1995年5月に行われる予定の日本選挙学会において報告(ディスカッション・ペーパーとして学会に提出)するとともに将来的に博士論文とあわせ,出版したいと考えている.
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