研究概要 |
本研究では経済データの多くのものに共通する発展的トレンドをもつ非定常時系列を分析に先立ち定常時系列への変換する際に生じる“過度の差分"問題を、ベイズ統計学の統計的推測理論の援用により解決すること、また提案する方法によって予測の改善を図ることを目的として研究が行われてい行われた。ARIMAモデルのなかで、(i)自己回帰(AR)部分における定常性が成り立つ確率と(ii)移動平均(MA)部分における可逆性が成り立つ確率を評価し、(i),(ii)を同時に最大化するように和分次数dを決める方法を提案した。まず(i)に関しては、論文Terui(1992)で展開された非線形ARモデルに対する定常性が成立する確率を評価する方法および計算プログラムを当該問題に対応できるものへの修正を行った。(ii)のMA部分の可逆性が成り立つ確率の評価に関しては、MA部分の係数の事後分布を近年急速に発展し多くの問題に応用されているマルコフ連鎖モデルに対するモンテカルロによる数値解析法であるGibbs samplingにより数値解析的に評価した。 研究の後半部分として、広汎なシミュレーションを実行し、提案する方法と従来の方法との比較をした。さらに分析の応用として、マクロ経済時系列の予測のパフォーマンスを従来の方法との比較検討をを行った。効率的なモンテカルロ積分による予測分布を構成することによって多期間予測量に対する統計的推測が包括的に扱え,“過度の差分"問題を明示的に扱うことに加え確率的リサンプリング法による予測量を利用することで、非線形時系列モデルでの結果同様に良好な予測パフォーマンスが示された。
|