研究概要 |
ノン・プロフィット・オ-ガニゼーション(NPO)の行動の社会経済における役割とNPOの行動の経済的特徴について分析した.NPOの行動特徴として,(1)イデオロギー的な目標を追求する(2)非分配制約によって収支を均等化させながら,特定の利他的な公共サービス(準公共財)を提供することによって経営者の効用を最大化させる(3)主として利他的な公共サービスを無料で供給するか,コスト以下の対価を要求する(4)生産するサービスの品質や数量の正確な評価が困難である,ことなどが明らかとなった. これまで「市場の失敗」によって営利企業では十分に供給されないような準公共財を供給するのは政府の役割であると考えられてきた。しかし,実際には多くの国々で,NPOが政府の補助金を受けながら準公共財の供給の担い手として活動している。これは家計の多様な欲求を政府が満たすことができないために,NPOが,いわば差別化された需要を満たすという役割を果たしていると考えられる。このようにNPOは政府よりもサービスの供給を安価に,しかも受益者の欲求を満たすことができる可能性がある。「市場の失敗」に対応できると考えられてきた政府も失敗するのであって,NPOはこの「政府の失敗」を解決するのに役立つと考えられる。 また簡単なモデルから,経営者の利他主義はNPOが効率的な生産を行うことを妨げないこと,NPOの非営利性それ自体は資源利用において非効率の源泉ではないことが明らかにされた。さらに,NPOへの政府補助金が減少するならば,NPOは非営利生産を減少させ,営利生産を増やすことなどが明らかにされた。NPOの「日本型モデル」を構築するためには情報公開によるデータベースの構築が望まれる.
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