研究概要 |
労働時間の短縮策として法的に認められ,大企業ホワイトカラーを中心に急速に進められる弾力化が,「合理化」策の一環として各企業で進められてきていることを明らかにした。大企業ホワイトカラーに対する労働時間の短縮=弾力化策が,(1)現実には,「合理化」の一環として行われていること,(2)しかも,この労働時間制度の変更が,単に労働時間にとどまらず賃金管理を大きく転換することを実証的に明らかにしてきた。 不況下で厳しい雇用調整がホワイトカラーにも及び,相対的に賃金の高い中高年労働者の雇用を削減する今日,この層の人件費抑制策として,労働時間の弾力化を利用して強力に推進されているのである。ホワイトカラーの労働時間弾力化がみなし労働時間制を利用して行われようとしていることは,主として上級管理職を中心に現在導入が進められている年俸制を下級ホワイトカラーにまで広げる動きとして注目された。未だ組合員でもある多くのホワイトカラー労働者に対して,残業手当の不払い合法化により,人件費を負担せずに労働させることができる。労働者の意識と行動を益々労資一体的にできるという点で同制度は企業にとってメリットがあるが,労働者サイドにとっては深刻な労働問題を惹起している。 この点で,ホワイトカラーに対する時短政策・施策を考えるうえでも,弾力的な労働時間制度のありかたを再検討する必要がある。
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