主にゲージ理論の応用して得られる情報を基に考察することにより、4次元多様体の微分構造にまつわる様々な現象について研究した。以下、新たに得られた研究成果について具体的に述べる。 1 ドナルドソンの定値交叉形式に関する定理とガンマ不変量との関係については、実験的具体的計算を試みただけで、記すべき新たな知見は得られなかった。 2 第2ベッチ数が10以上の有理曲面の球面表現可能かつ自己交叉が非負のホモロジー類を複素曲面論的に特徴づける問題に関しては、ホモロジー類が滑らかな複素曲線で代表される場合については完全に決定することができたが、ホモロジー類が一般の場合については完全には決定できていない。これは、有理曲面の交叉形式の直交群の元で微分同相で実現されるもの全体からなる部分群の作用を詳細に調べることに技術的困難が伴うためである。 3 有理曲面の交叉形式の直交群の元で微分同相で実現されるもの全体からなる部分群の構造を無限生成のコクスター群、あるいは、無限次元のカッツ・ムーディー環の理論を用いて記述する問題については、準備段階の計算を試みただけで、記すべき新たな知見は得られなかった。 4 ハベガ-の商空間がエンリケス曲面と微分同相であるか否かを決定する問題に関しては、位数2の有限群の作用についての考察を行ったが、記すべき新たな知見は得られなかった。 5 サイバーグ・ウィッテン方程式から得られる4次元多様体の新しい不変量について、詳細に研究した結果、有理曲面の複素曲線で代表されるホモロジー類を代表する滑らかな曲面の種数に関し有力な情報が得られた。
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