研究を次のように段階に分けた。 第一に、平面上の曲線についてcurve shortening problemの数値解析を行うこと。これは、当初の計画より、等高面によるviscosity solutionの解析を計画していた。解析的に証明されていた事実として、「平面上に埋め込まれた閉曲線のcurve shorteningは正円に収束する(Grayson)」が知られているので、このことを数値解析的に実証することを目標とした。そのために、(a)与えられた閉曲線を等高面に持つような(できるだけ自然な)平面上の関数を作る。(b)curve shortening problemのスキームを制作する。という2段階に分けて考え、今年度においては、(a)についてのプログラムをつくり、実用的なものにした。基本的なアイディアは、与えられた曲線を台に持つような関数の初期値問題に持ち込めばよい。(b)の基本的な枠組み(実行可能なスキームの作成)を桂田祐史氏(明治大学)の研究を参考にした。 第二に、空間上の曲面に対する平均曲率流についての数値解析を行うこと。これに先立って、2次元複素射影空間上に埋め込まれたリーマン面についての考察をした。空間上の閉じた曲面はcompactなリーマン面に他ならないが、それは代数曲線として2次元複素射影空間に埋め込まれている。2次元複素射影空間から3次元ユークリッド空間へのうまい射影によって、代数曲線が空間曲線になるかどうかを調べることが興味深い。 与えられた空間曲線について、それを等高面とするような空間上の関数を作るプログラムも作成中である。アイディアとしては平面曲線と場合と同じである。
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