研究概要 |
1 数学の理論研究.液晶の電磁気学的平衡状態を記述するEricksenモデルの数理解析は調和写像型変分問題に帰着される.調和写像型変分問題に対する熱型勾配流を与える非線形放物型偏微分方程式を近似する後退差分型変分汎関数の最小化関数の族について次の結果を得た. (1)後退差分型変分汎関数のEuler-Lagrange方程式である後退差分偏微分方程式の解の族に対して、解の正則性を示す上で基本的役割を果たすHarnack不等式が近似に関して一様に成り立つ(Nonlinear Worldに掲載予定). 粘性のある液晶の電磁気学的平衡状態を記述するEricksenモデル及び超電導の理論におけるGinzburg-Landauモデルの数理解析はp-調和写像型変分問題に帰着される(p>1).p-調和写像型変分汎関数を近似する退化型変分汎関数の変分問題に対応した熱型勾配流を記述する非線形退化放物型偏微分方程式の解の構成について次の結果を得た. (2)強解のクラスに対するa-prioriな評価の構成.特にあるweightを伴ったエネルギーの単調性を示す不等式が成り立つことを証明した.(京都大学数理解析研究所講究録掲載予定). (3)(3)の結果を基礎にして,時間大域的な弱解の構成とその解が(空間変数に関しての)一階微分とともに部分的にヘルダー連続であることを証明することに成功した(Courant研究所のF.H.Lin教授に評価され,投稿先を検討中). (4)有界な弱解のクラスに対するa-prioriな評価の構成(Rice Univ.のR.Hardt教授に評価され,投稿先を検討中). 解の最良の部分的滑らかさ(解の不連続点(特異点)の集合の大きさがハウスドルフ測度の意味でどこまで小さくなるか)については考察中である. 2.数値シミュレーション.液晶の変分問題(調和写像型変分問題)に対応した熱型勾配流を近似する後退差分型変分汎関数の最小化関数の族(離散的勾配流)による数値シミュレーションについては次のことを行なった. (1)空間次元が1の場合について離散的勾配流の時間発展の数値実験を数値解析用ソフト(MATHEMATICA)を使って行なった.空間次元が高次元の場合に離散的勾配流の時間発展の数値シミュレーションを行なうにはメモリ増設が必要である(現有メモリは10MB,スムーズに作動させるためには40MBが必要).また,そのプログラム作成は今後の課題である.
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