研究概要 |
本研究は,Banach空間Xにおける線形発展方程式に関するものであり,微分作用素の定義域が考えている空間において必ずしも稠密とは限らない場合の問題を取り扱うことのできる抽象的理論を構築することを主な目的とした。この種の問題の研究は,ヨーロッパで始められ,semigroupの不定積分の性質を持つ“integrated semigroup"の理論)Hille-吉田の定理として知られる発展方程式の基本定理を拡張するもの)が非斉次な抽象的Cauchy問題u´(t)=Au(t)+f(t),t∈[o,T],u(o)=xの古典解の存在と一意性の問題に応用されて以来、理論の美しさとその応用上の重要性から発展しつつある。今回得られた結果は,以下の通りである。 1°抽象的理論において“双曲型"と呼ばれる条件のうち,『A(t)の共通の定義域DがXにおいて稠密』という条件を除く残り全ての条件を{A(t):t∈[o,T]}が満たすという仮定のもとにnonautonomous integrodifferentral equation (IE) u´(t)=A(t)u(t)+∫^t_0B(t,s)u(s)ds+f(t),t∈[o,T],u(o)=u_0の古典解の存在と一意性に関する結果“u_0∈D,A(0)u_0+f(0)∈Dならば,問題(IE)は唯1つの古典解をもつ"を得た。この結果は,上で述べた下線部の問題に対する結果の1つの拡張である.(研究発表論文) 2°具体的な数値解法を抽象的に定式化したものであるsemigroupの収束・近似問題をintegrated semigroupの場合にと枠組を拡げ,“離散パラメーター半群の積分族によるintegrated semigroupの近似"という問題を中心に考察した。(論文投稿中)
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