ハイゼンベルグ描像でのゲージ場及び重力場の共変的正準量子論におけるワイトマン関数(又はγ関数)の機能的計算法の確立に関して以下の成果が得られた。 1.2次元量子重力において、厳密性を度外視して提案されていた新しいダイアグラム的方法により、実はすべてのワイトマン関数を厳密に再現できることを証明した。これにより、4次元量子アインシュタイン重力における結合定数κがゼロの極限の近似解に関してもこのダイアグラム的方法が正しいことが明らかになった。この成果は、雑誌論文(New Diagrammatic Method for Quantum Field Theory in the Heisenberg Picture.III -Its Proof in Two-Dimensional Quantum Gravity-)として発表済みである。 2.4次元量子アインシュタイン重力に対するκの冪展開による近似解法について、その演算子解に対する漸化式を与えるコ-シ-問題を構成した。しかし、対応するワイトマン関数についてはまだ明らかではない。 3.ゲージ理論の結合定数gがゼロの極限の近似解に対応するBF理論に対しては厳密な演算子解といくつかの簡単なγ関数が得られているに過ぎなかったが、すべてのγ関数に対する機能的計算法として2次元量子重力におけるダイアグラム的方法と類似した方法を現在構成中である。 4次元量子アインシュタイン重力に対してこれまで一般になされてきた繰り込み不可能性の議論に関して以下の点を明らかにした。この繰り込み不可能性は、特別な仮定に基づかざるを得ない相互作用描像の摂動論が不適当に採用されていた事による帰結である可能性が高く、必ずしも4次元量子アインシュタイン重力に対する如何なる摂動論的方法も無意味であることを示すものではないことを簡単なモデルを用いて明らかにした。すなわち、相互作用描像では通常の意味で繰り込み不可能であっても、ハイゼンベルグ描像に基づく或る適切な摂動論を用いれば有限な結果を得ることができる量子重力理論のモデルを構成した。この成果は、雑誌論文(Nonrenormalizability May Be Superficial in the Covariant Formalism of Quantum Gravity)として現在投稿中である。
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