研究概要 |
中性子エネルギー0.05〜0.2MeVの領域での^<12>C(n,γ)^<13>C反応断面積が、1/v則からの予想値よりも約10倍大きいという現象の解釈として、^<13>C核の2s励起状態が中性子ハロ-構造を持ち、核半径が増大しているため、断面積も大きくなっているという考え方が提案されている。この考えによれば、ハロ-効果は0.5〜5MeVの領域でさらに顕著であるため、その領域での^<12>C(n,γ)^<13>C反応断面積は、ハロ-効果の検証に最適の観測量である。本研究では、断面積測定を目指し、まず^7Li(p,n)^7Be、^<12>C(d,n)^<13>N、^2H(d,n)^3He各反応による中性子源を開発し、それぞれ0.55MeV、1.75MeV、5.3MeVの速中性子パルスビームの発生に成功した。 次に上記の中性子ビームを用いた測定で問題となるバックグラウンドをテスト実験により調べ、特にヘヴィメタル(ニッケル-タングステン合金)が検出器に直接侵入する不要な中性子の遮蔽に有効であることを見い出した。 さらに、0.55MeVの中性子エネルギーで実際に測定を行い、暫定的な断面積として37±10μbという結果を得た。これは世界初の測定結果である。また、上記の断面積は中性子ハロ-効果を考慮した理論的予想値よりもさらに大きく、ハロ-効果による解釈だけでは不完全である可能性を示唆している。現在1.75MeVでの測定の準備を行っており、ハロ-効果による解釈の妥当性およびハロ-効果の強度について重要な知見が得られることが期待される。
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